『マカロワ』と後藤輝元と藤井隆

音楽

早朝は畑に出ることを日課にしている。
youtubeやpodcastを聴きながら、畑仕事することを日課にしている。

その日は、前日のアフター6ジャンクションを、potcastで聴いていた。
特集は、「藤井隆の新たな挑戦!最新プロデュースアルバム「マカロワ」はどのようにして生まれたのか?藤井隆さんと後藤輝基さんに直接聞く特集」だった。

あのフットボールアワー後藤が、藤井隆プロデュースでアルバムを出した。
「フット後藤と歌」といえば、たまにギターを持って、長渕剛を歌う姿を見かける。
ただそれは、「芸人が、なにをマジで歌ってんの?」という、笑いの一つを提供されたものにすぎない。

でも、今回は違った。お得意のギターも持たず、笑いもなし、歌声だけのアルバムを提供してきた。podcastでは、そのアルバムの魅力を取り上げていた。聞き終えた僕は、直ぐにyoutube musicで『マカロワ』をダウンロードした。

【後藤輝元の歌声】

アルバムを聴いた第一印象としては、「歌声がなんかいい」だった。
元々ハスキーでいい声だが、普段はツッコミ仕様で、声を荒げている印象がある。
歌では声を荒げず、抑えめのハスキーで、漫才終わりのカッコつけた「もうええわ」の感じで歌っている。もはや歌詞に「もうええわ」があっても、違和感がないくらい、抑えめのハスキーがしっくりきている。

後藤の歌声については、podcast内でも言及していた。
藤井隆が妻乙葉の言葉として、「歌でモテたことのある人の歌声」「横にいる人に歌ってあげて、ステキこの人って、ウットリさせることができる歌声」と語っていた。
アナウンサーの日比ちゃんも、「歌声にトロけたくなる」「セクシーとはまた違う艶やかさ」と、女性陣から大絶賛である。

実際に歌声を聴くと、言われていることが分かる気がする。
ただし、歌っている姿を見ると、なぜだか笑いが込み上げてくるので、個人的には映像なしの音声のみで聴くことをお薦めする。

【藤井隆のプロデュース力】

このアルバムの主役は、もちろん後藤輝基であるが、やはりプロデュースした藤井隆の存在は大きい。特集でも、そこを掘り下げている。

僕の中で、藤井隆と音楽といえば、世代的に「ナンダカンダ」だし、最近だと「ディスコの神様(tofubeats feat 藤井隆)」が好きでよく聞いていた。

本作『マカロワ』は、昭和~平成初期アイドルの曲と、伊藤銀次氏の曲「こぬか雨」をカバーしたアルバムである。僕はアイドルソングに詳しくないので、元ネタはほとんど知らない。宝生舞の『Carnival』を、かすかに知っていた程度だ。
ほとんどが初めて聴いた曲だが、すべてが「いい曲」と思えた。これは、他ならぬ藤井隆の選曲が優れているということだろう。

それら「いい曲」に、後藤の歌声がしっくりくるようにアレンジを加えているのだろう。この辺も全く詳しくないので、きっとそうなのだと、勝手に解釈している。
podcastではアレンジについての言及はなかったが、歌い方には指導があったと語られている。

通常、歌い方の指導をする場合、「この曲は、もうちょっとキーを高めに」とか、「ゆっくりのテンポで」など、音楽的な要素で指導すると思われる。しかし、藤井隆の場合、

「この曲は、ある大物俳優さんが『歌ってくださいよ~』と言われて、当日なんとなく憶えて歌った歌がものすごくよくて、『これでいいの?じゃあね』と帰っていく。そんな雰囲気の曲」

といったストーリー、あるいは設定を指導?注文?をするそうだ。
ちなみに、この設定での大物俳優さんは「柴田恭平」をイメージしているとのこと。

ライムスター宇多丸も、以前に藤井隆と曲を作った際に、後藤と同様に設定への細かい注文があったと語っており、そのとき宇多丸は藤井隆に対し「この人は、クレイジー型のクリエイターだ」と思ったそうだ。そんなクレイジー型クリエイター藤井隆が、後藤輝元の歌声の魅力を引き出すために作ったのが、今回のアルバム『マカロワ』である。ちなみに、タイトル『マカロワ』も藤井隆の案で、伝説のバレリーナ「ナタリア・マカロワ」から取っている。

【アルバムに込められた思い】

最後にもう一つ、藤井隆が語っていた音楽活動に対する思いを書いておきたい。

笑われても良いけど、御出汁はちゃんとしておきたい

この言葉には、お笑い芸人が音楽活動をする上での、覚悟と真剣さが込められている。

かつて「ナンダカンダ」がブレイクしたとき、藤井隆は笑われた。
作り手が真剣に作ってくれた歌を、自分が歌うことによって笑われたのだ。
その経験がベースとなり、笑われても良いけど音楽はちゃんとしておきたい、「御出汁はちゃんとしておきたい」になっている。

その思いのもとで作られたアルバム『マカロワ』。当たり前に御出汁がとても美味しい。
美味しいので、僕は何杯もいただいているし、なんなら今日もいただこうと思っている。
そして、この美味しい御出汁を、たくさんの人に召し上がっていただきたい。心からそう思う。

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