祇園精舎の鐘の声
諸行無常の響きあり…
意味も分からず、ただ暗記していたのは、今や昔。 沼にハマった僕は、文庫『平家物語 ビギナーズクラシックス』を、読み込むほどになった。
マンガ『平家物語 横山光輝 著』も読んだ。毎週欠かさず『鎌倉殿の13人』も観ている。映画『犬王』も観たいと思っている。
最も決定的だったのは、アニメ『平家物語』だ。あまりに感動して、OP曲「光るとき」を聴いただけで、少し泣きそうになる自分がいた。
歴史を知るには教科書でも良いが、やはり物語を読むのが良い。 『平家物語』も、そう思わせてくれる作品だった。
【語り継がれる物語】
沼を決定付けたのは、前述のとおり、アニメ『平家物語』である。2022年1月スタートのアニメだが、当時は観ておらず、最近になって配信をイッキ見した。
アニメのことは詳しくないが、監督「山田尚子」や、キャラクターデザイン「高野文子」は、『けいおん』や『ドミトリーともきんす』で知っていた。他にも素晴らしい方々が、作品に関わっているのだろう。そう思えるほど、素敵なアニメ作品だった。
そんな素敵な作品を、監督はどんな想いで作ったのか気になり、山田尚子のインタビューを読んだ。
歴史的事実よりも、その時代を生きていた人の想いや考え方、美学に寄り添ってみたいと思いました。
歴史的事実は、教科書を読めば分かる。 でもそれは、テストの点数に消えてなくなり、僕の中に残っている平家物語は、清盛や平家の人々が「驕れる者」という印象だけだった。
この作品を観て、その印象も変わり、同時に「その時代を生きていた人に寄り添う」という視点を教えてもらった。
歴史は人々によって語り継がれる。平家物語も、琵琶法師によって語り継がれてきた。800年の時を経て、山田尚子が琵琶法師となり、僕に『平家物語』を語り継いでくれた。
【羊文学『光るとき』】
そもそも、僕がアニメ『平家物語』を観るキッカケになったのは、OP曲『光るとき』を知ったことにある。2022年に出た羊文学のアルバム『our hope』、その二曲目がこの曲だった。
アルバムを聴いて「良い曲だなぁ」と思っていたら、アニメのOP曲に使われているという。気になって調べていくと、『平家物語』に行き着いた。
羊文学の曲は、どれも歌詞が良くて好きなのだが、『光るとき』はアニメのために作ったということもあり、歌詞の全てがグッとくる。
特に好きな部分がある。
最終回のストーリーは 初めから決まっていたとしても 今だけはここにあるよ 君のまま光ってゆけよ
そう、『平家物語』は最終回が決まっている。 必ず平家は滅ぶ。そのことが、歴史的事実として決まっている。
きっと、800年前、平家の人々も分かっていたはず。 重盛も、資盛も、徳子も、平家が滅びることは分かっていた。
分かったうえで、必死に生きていたのだろう。 そのことを想いながら、この曲を聴くと目頭が熱くなる。
【美しい世界】
歌詞の中に、次の一文がある。
何回だって言うよ 世界は美しいよ 君がそれを あきらめない
アニメ『平家物語』の世界は美しい。
映像の美しさ、ストーリーの美しさは勿論、 混沌の時代に必死で生きた人々、その姿が何より美しい。
羊文学の(Vo&Gt)塩塚モエカは、曲名『光るとき』の由来について、 「強いて言えば、命」と言った。
いまを生きている中で、「命」を強く感じることは、正直言ってあまりない。混沌の時代に変わりないが、僕自身は恵まれた世界を生きているのだろう。
それでも、必ず最終回はやってくる。 「命」が終わるそのときに、「世界は美しかった」と言える生き方。 それを『平家物語』から学べた気がする。